2005年11月28日

天皇制の伝統とは

 最近の、皇室典範改正問題について、ふと思ったことがある。
 今月24日に、皇室典範に関する有識者会議は、女性天皇容認の結論を出したが、それに対し、保守的な論者からは、「皇室の伝統を破壊する」と言った厳しい意見が噴出している。つまり、皇室典範を改正し、女性天皇を擁立した場合、宮家に男の子が生まれないと、女性天皇の皇嗣が次の天皇となり(改正後の皇室典範は、第一子優先となる模様なので)、その後の天皇は、「女系」の天皇となる。「女系」天皇に反対する人々は、男系男子という伝統が失われると、伝統という重みに立脚して存続してきた天皇制そのものが揺らぎかねない、ということを懸念しているのである。

 今日において、天皇制の存続は、我々国民の手に掛かっている。今、この瞬間、日本が天皇制を保持しているのは、国民の過半数以上が、天皇制の存在を認めているからこそである。さて、その多くの国民は、何を根拠に、天皇制を認めているのであろうか。おそらく、天皇制の持つ伝統は、天皇制を認めるうえで重要な要素であろう。伝統を分断してしまったら、天皇制の存続そのものが危うくなる、という保守派の主張も、もっともであると思われる。
 しかし、重要なのは、「男系男子である」という伝統であろうか。そもそも、「男系男子」という伝統を重視する主張は、最近になって活発になった主張ではないだろうか。実際、天皇制が125代続いてきた、ということを根拠に、天皇は尊いと考える国民は多いと思うが、一方で、「男系男子である」という伝統の上に立脚しているからこそ尊いのだ、と考える国民は、それほど多くはないだろう。「125代続いてきた」という伝統も、検証不可能な、フィクションに近い伝統であると思うが、たとえそうであっても、多くの国民が天皇制を認めている以上、「男系男子」という伝統が分断しても、その途端に国民が天皇制を認めなくなる、ということは考えにくいのではないだろうか。天皇制は、「男系男子」という伝統が寸断した程度で崩れてしまうほど、「安っぽい」伝統なのだろうか。「女系天皇」を認めた程度で、国民が天皇制からそっぽを向くようならば、年間100億近い税金をかけてまで皇室を維持することに、一体どれほどの価値があろうか。

 天皇制の意味は何なのか。拙速な結論を出すのではなく、国民的な議論を念入りに行なう必要があるだろう。
posted by NISSHA at 19:16| Comment(3) | TrackBack(3) | 今日の一言 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
失礼します。「天皇制」という言葉は、戦後コミンテルンが自分達のイデオロギー故に造りだした階級闘争史観の産物。正しくは皇室伝統と呼ばなければいけません。
Posted by 難波 at 2005年12月13日 09:58
この皇位の継承問題、簡単ではないですね。百家争鳴だと思います。以下も、ほんの私個人の私見に過ぎません。
 伝統は、それなりに大切だと思います。天皇の権威の源泉は、伝統です。伝統がなければ「正統性」はなく、一般国民と異なりません。
 「一夫一婦制」の現在、男系だけで皇位を維持するのは、かなり困難と言わざるを得ません。この根本原則を変更してしまうと、現在の天皇の権威(今もない!?)の大幅な低下を招かざるを得なくなりますが、それもやむを得ないことでしょう!
 私は消極的賛成というか消極的同意の立場です。他方有史以来の伝統の維持を主張する方々をもいます。この皇位の継承問題、議論だけじゃつまらない。その方たちの納得も得られるような方法を模索すべきだと考えます。
Posted by at 2006年04月17日 11:03
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4月17日のお客様
>この皇位の継承問題、簡単ではないですね。百家争鳴だと
>思います。

 まったくその通りだと思います。どっちに転ぶにしても、拙速な議論で一朝一夕に決められたのでは、「国民の意思の反映」という観点からも望ましくありません。

>他方有史以来の伝統の維持を主張する方々をもいます。
>この皇位の継承問題、議論だけじゃつまらない。その方たち
>の納得も得られるような方法を模索すべきだと考えます。

 私は、いわゆる保守派の、女系天皇反対論には批判的ですが、「廃帝」論者というわけでもありません。
 私が気になるのは、保守派の、女系天皇や共和制の是非なども含めた包括的な議論を頑なに拒む姿勢というのが、単に議論を「逃げている」だけなのではないか、ということなのです。仮に女系天皇や共和制を議論の俎上に載せたとしても、議論の結果、「やはり今の制度のままでいいね」という結論になるのなら、彼らとしても何の不都合も無いはずです。おそらく、完全な共和制を志向している国民はそうは多くないでしょうから、「議論することそれ自体が天皇制の存続を危うくする」といった保守派の主張は、根拠に乏しいですし、そう考えているのだとしたら、天皇制の伝統の「重み」を軽く考えすぎなのではないか、と思います。
Posted by NISSHA at 2006年04月17日 17:45
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